赤鹿との出会いは、夫と共にオーストラリアとニュージーランドに牧畜の視察に行った時のことでした。
オーストラリアの広大な牧場でもたくさんの鹿を見ましたが、その後知人が住むニュージーランドのウェリントンを訪ねました。
ニュージーランドには人口より多く羊がいると言われていましたが、空港に着いた途端に家畜の匂いがし、さすが牧畜の国と感心したものです。
知人が車で鹿牧場を案内してくれたのですが、その時のことが赤鹿を導入する契機となりました。
大きな角のボス鹿が統率する見事な集団の動き、その姿かたちの美しさに改めて気づき、夫は強く惹きつけられたのです。
牧場主の家で、鹿肉をサイコロステーキにしてご馳走して頂き、初めて食べたおいしさにも感動しました。
牧場主は鹿肉の3大特長を教えてくれました。それがとても印象に残り心に刻みつけられたのです。
1、脂肪がほとんどなくヘルシー(すらりとしたその姿)
2、赤身が多く高タンパク
3、腸内での消化時間が野菜と同じ位の2〜3時間であること
それを聞いて、近づく高齢化社会の優秀なタンパク源になる可能性を秘めていることを確信しました。
結局、輸入商社の関係でスコットランドから赤鹿60頭をイギリスから導入しました。
その赤鹿達が最初の放牧地約2ヘクタールの一画に放牧されました。
イギリスから来た珍しい赤鹿はいつの間にかとても人気者になり、地元の人達がよく見物に訪れていました。
その後、赤鹿は増頭して食肉として活用されました。
冷凍肉としての販売、バーベキュー、レストラン、ソーセージ、ジャーキー、缶詰にも加工され販売。
立派な角もとても人気がありました。
館ヶ森アーク牧場のロゴマークは長いこと鹿がシンボルになっていました。私たちが鹿マークと呼んでいたものです。
1時は350頭位に増えた赤鹿も、その後のいろいろな事情により、今は40頭ほどになり食肉用にはしておりません。
ニホンジカに比べて穏やかな赤鹿は今でも牧場内の人気者です。
当初から何代目かの今のスコットランド赤鹿達は、もうふるさとの事はすっかり忘れてしまっているでしょう。
今回は、スコットランドの赤鹿のお話しでした。
橋本 志津